Gallery Commonは、2025年1月25日から2月23日まで、福井和来(ふくい・わく)の個展「在在(ザイザイ)」を開催いたします。
2年ぶりのフルスケールの個展となる本展では、ネオンというメディウムを扱う作家の新たな展開が示されます。ネオン職人としての修業を積んできた福井は、溶接された鉄による骨格やファウンド・オブジェクトなどの様々な新しい素材を取り入れ、彫刻的アプローチを展開しています。新たなアプローチのもと、有機的な表現へと拡張された「光を自由にする」という福井の試みは、福井自身が感動する方へと創造を推し進めてきた先に現れてきたものです。
「いたるところ」という意味を持つ「在在」は、光という福井の追求する包括的で超越的な体験を示しています。光をあらゆる文脈から解放するための手段として抽象性を用いることは福井の制作において重要であり、そうして象徴や具象の枠にとらわれない作品が生み出されてきました。
こうした哲学は引き続き擁しつつ、福井は偶発性を取り入れた直感的な制作アプローチを採り入れ始めます。かつては外注に頼らざるを得なかった金属加工の技術を習得したことで、形や空間の更なる試行錯誤が可能となり、人の手の痕跡が残る鉄製の基部が創造されました。また、制作過程で気になったさまざまな素材やオブジェも自由に取り入れられるようになりました。
有機的で不規則な形状は、即興的で自然発生的な現象への福井の反応であるといえます。波打つ金属板、スチールビーズ、光沢のある布地が光の断片を反射し、あるいはネオンの光が金属の脚の上で宙に浮き、その電気コードはゆるやかな蔓のように垂れ下がっています。
それらの立体的構造は、ネオンライトと場が時に一方が先行し、後続し、あるいは同時に相乗効果を生み出しながら作り出され、アーティスト、ネオンライト、金属、ファウンド・オブジェクト、そして展示空間との間で行われる対話として現れています。また福井は、感情を引き起こし想像力を解放するための欠かせない要素として音楽を挙げています。時間の要素とすべての感覚の関与を強調するように、各作品には楽曲が結びつけられています。
寺の家に生まれ育った福井の作品からは、堂の中での光の荘厳な体験が感じ取れます。この無意識的な影響は、アーティストの空間と時間へのこだわりを、それなくしては作品が単なる物体になってしまうほどの不可欠な要素にしています。製品のように並べられたり写真によって空間と時間から切り離されてしまうと、作品はその本質的な特質である空気を纏った場としての性質を失い、アウラのない空虚なものへと変わってしまいます。結局のところ芸術作品とは、単なる物体そのものではなくそのアウラや体験であると言えるでしょう。
光、物質、空間、音との親密な関係を通じて、福井は理想とする「感動」を呼び起こす没入環境としても機能する作品を創り出そうとしています。物理的な物体を超越することで、福井の作品は、時間、空間、感情への意識を高める入り口となり、物質性が純粋な大気へと溶け込む別世界の領域へと鑑賞者を誘うのです。
Waku Fukui / 福井 和来
1996年東京生まれ。ネオンライトの探求を中心に活動する福井は素材、形、要素に対する私たちの理解に挑戦し、私たちがどのように世界を認識し、関係しているかについて問いを投げかけている。
2017年に国内有数の工場島田ネオンにて職人としての修行を開始、やがてニューヨークへ渡米、20世紀を代表する芸術家ナム・ジュン・パイクの作品も手掛けた著名なネオン職人、デイビッド・アブロンに師事。 帰国後、ネオンサインスタジオ「 後光」を設立し、2024年に若手作家のためのアーティストランスペース「後光スタジオ」を設立。
近年の主な展覧会に、CON_とDomicile Tokyoで同時開催した個展「素朴光」(2022)、Gallery Commonでの個展「Afterimage」(2022)、「In Person」(2020)などがある。
EXHIBITED ARTWORKS
EXHIBITION
Waku Fukui 個展「在在」
Jan 25 — Feb 23, 2025
ARTISTS
VENUE
- URL
- http://www.gallerycommon.com/
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前5丁目39−6B1F
- 開館時間
- 12:00 — 19:00
- 休館日
- Mon・Tue
- 入館料
- 無料