Gallery Commonでは8月24日から9月22日まで、石井佑果、大﨑土夢、岡野智史、海沼ちあき、ゴリラ・パーク、須田日菜子、土屋裕央、南谷理加、半田颯哉、丸山太郎、村松朋広、渡邊涼太(50音順)によるグループ展「Eudaemonia」を開催いたします。
「Eudaemonia」(ユーダイモニア)とは、ギリシャ語で《幸福》という意味をもつ、アリストテレスが唱えた「善き人生」という哲学用語です。これは、特有の能力を活かした方法で生きることが、 自身にとって本当の《幸福》な状態につながると説いたものです。
本展は、社会がますます複雑化するなかで、どこか軽やかで、ときにユーモラスな視点で反応する12名の多様なアーティストたちによる、好奇心と知的探求に満ちた展覧会です。
アリストテレスがこの《幸福》について説いてから、およそ2,400年あまり経った現在、この哲学はどこか時代遅れにも感じられます。アリストテレスが《幸福》を妨げるとして警鐘を鳴らしたもの「お金」「名声」「権力」「快楽」等は、いまではすっかり私たちが崇拝しているものです。 これはエゴと混沌が渦巻く世界で、この哲学そのものが無意味になってしまったという見方もあるでしょう。
不条理な世界で《幸福》に到達することは難しく思えてきます。それでも、自分と世界の可能性を見つけたいという願いこそが、芸術表現の原動力になっているのです。もしかしたら、私たちの表現活動への姿勢はぐるりと一周して「なぜこれを作るのか」という原点に立ち返っているのかも知れません。
本展の作品は、素朴さと皮肉、ナラティブとナンセンスの境界線上に位置します。断片的でシュール、奇妙でユーモラス、不満を抱きつつも希望に満ちており、現代の複雑な感情を反映しています。時代は変わっても、紀元前350年の古代の芸術と同じように意味と充足を求めているのです。
では、本展の作品は《幸福》とどう関係しているのでしょうか?各アーティストが独自にこの問いに答えています。この展覧会でその答えを見つけ出していただければ幸いです。
石井佑果
1995年香川県出身、東京を拠点に活動。2022年、東京藝術大学大学院美術研究科絵画学科油画専攻修了。 ステレオタイプな西洋絵画を連想させるモチーフや筆致の引用、あるいはアルファベットやトランプカード、ピアノの楽譜といった記号的な要素の羅列や編集による絵画作品を制作。膨大な量の「絵画」と呼ばれるものの中から取捨選択する方法と判断、またその描き方によって、絵画の成立とその無数の組み合わせについての検証を行なっている。主な個展に、「大逆走」same gallery(東京、2024)、グループ展に、「幸福惨憺世界: Dat + 石井佑果 + 山脇紘資 + O JUN」ミヅマアートギャラリー(東京、2024)、「石井佑果・丸山太郎 ENCOUNTER」三越コンテンポラリーギャラリー(東京、2022)などがある。
大﨑土夢
1984年福岡県生まれ、東京を拠点に活動。同時多発的に湧き上がる相反する感情や状況を、多様な技法、色彩、形で連鎖的に画面に同居させ、絵画表現の可能性を追求している。主な個展に、「Colorless green ideas sleep furiously」AIR motomoto(熊本、2024)、「8の儀式と8人の王子」Marugo deli Ojigadake(岡山、2024)、グループ展に、「ANB Open Studio vol.7『プ(ブ)ラ(ネ)ズ(グ,フ,ウ)マ(ー)』」ANB Tokyo(東京、2022)、「サテライト^サテライト」HOTEL ANTEROOM KYOTO(京都、2022)、「Fwd:Good Night Image」BnA Alter Museum (京都、2020)などがある。
岡野智史
1979年埼玉県生まれ、東京都在住。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。主に油彩、水彩、鉛筆、アクリルを使った絵画作品に取り組み、近年は、80〜90年代の日本のポップカルチャーを参照しながら、エアブラシ、型紙、網を用いた独自の技法を開発。キャンバスをモニターと捉えて描く映像のワンシーンのような絵画を制作している。主な個展に、「ROLES」Rod Gallery(東京、2024)、「SCENES」亀戸アートセンター(東京、2023)、「CONY」Clear Gallery(東京、2022)、BLUEY BLUEYでのグループ展(ロンドン、2024)などがある。
海沼ちあき
1995年東京生まれ。2018年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。雑コラやVaporwaveなどのネットカルチャーに影響を受けながら資本主義社会での生活をテーマに、しばしば皮肉やユーモアを交えた絵画作品を制作している。主な個展に、「KAINUMA and the CHOCOLATE FACTORY」亀戸アートセンター(東京、2024)、「システム設定神話 らくえんきょう」新宿眼科画廊(東京、2023)、「超カイヌマ原画展~ザ・ナイーブ・サンクチュアリ~」新宿眼科画廊(東京、2021)、グループ展に、「EPIC PAINTERS Vol.13」THE blank GALLERY (東京、2024)などがある。
ゴリラパーク
1998年埼玉県生まれ。2021年武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業。2023年東京藝術大学彫刻専攻修士課程を修了。彫刻やレリーフ、絵画の要素を行き来しながら具象と抽象を対比させるように、超絶技巧の木彫に、古代の壁画を思わせるシンプルな線によるペインティングは、観るものを混乱させ、「観る」ことについて考えさせる作品でもある。主な個展に、「宇宙人の幽霊に会ってみたい」GALLERY TAGA2(東京、2021)、グループ展に、「マイマップでラインとシェイプを描画する」タカ・イシイギャラリー(前橋、2023)などがある。CAF賞2020で海外渡航費授与者として選抜され、2021にはART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 2021長谷川新賞を受賞。
須田日菜子
1998年東京都生まれ、同地を拠点に活動。2023年東京藝術大学美術科油画専攻卒業。主に綿布やスプレーを用いて、生きてる身体を持つことについてシンプルな線で大胆に身体を描写する表現で知られる。主な個展に、「せきをしてもひとり」JINEN GALLERY(東京、2022)、「Light(i.e. not heavy.)」JINEN GALLERY(東京、2021)、グループ展に、「Step on a chair」銀座 蔦屋書店(東京、2023)、「WELL JUNE」moosey gallery(ロンドン、2023)などがある。
土屋裕央
1987年東京生まれ、同地を拠点に活動。2010年法政大学経済学部中退後、2014年東京造形大学美術学科絵画専攻卒業。2016年に東京造形大学大学院を修了。ミクロとマクロが画面に同居する視点で死生観をテーマに作品を制作。主な個展に、「Landscape」KOKI ARTS(東京、2022)、グループ展に、「境界のかたち」 EUREKA(福岡、2023)、「井上光太郎・土屋裕央・Storm Tharp・Mario Trejo」no-ma(東京、2021)、Winter Show KOKI ARTS(東京、2019) 、「FACT AND FICTION」SPRING/BREAK Art Show(ニューヨーク、2019)、「The Crossing」GALLERY EXIT(香港、2018)などがある。
南谷理加
1998年神奈川県生まれ。2021年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業、2023年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。現在は茨城を拠点に活動。作品制作を通して、絵画というメディウムの可能性と制限とを行き来するような、イメージの実験を追求している。主な受賞歴として、2022年にCAF賞入選、2023年にART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 小山登美夫賞受賞。主な個展に、「黙劇」小山登美夫ギャラリー(東京、2023)、「ブレイン・ウォッシュ」Biscuit Gallery(東京、2022)、グループ展に「アートアワードトーキョー丸の内2023」行幸地下ギャラリー(東京、2023)などがある。
半田颯哉
1994年浜松生まれ、広島出身、東京都在住。アーティスト、インディペンデント・キュレーター。テクノロジーと社会倫理の関係や、アジア・日本のアイデンティティを巡る問題に焦点を当てる。2019年、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。また2023年に東京大学大学院学際情報学府修士課程を修了。アジアン・カルチュラル・カウンシルの2024年度ニューヨーク・フェローシップ・グランティーに選ばれている。
丸山太郎
1991年神奈川県生まれ、同地を拠点に活動。2021年東京芸術大学大学院博士後期課程彫刻専攻修了。既製品と木彫を組み合わせたユーモアラスな彫刻作品や塑像作品を制作。主な個展に、「笛と正中線は空の彼方に」東葛西1-11-6 A倉庫(東京、2024)、「リバーシブルサスペンス/ずっといい感じの思い出」TAKU SOMETANI GALLERY(東京、2021)、グループ展に、「石井佑果・丸山太郎 ENCOUNTER」三越コンテンポラリーギャラリー(東京、2022)、「Under Current」Powerlong Museum(上海、2021)、「TAION」青山スパイラル(東京、2021)などがある。
村松朋広
1988年愛知県生まれ、鎌倉を拠点に活動。
制作において、自身の無意識にある情景や、内観することで見えてくる情念を意識すると共に、自然界において生物の立場を俯瞰して捉えることによって、実空間に広がる時間の層や各々の存在の相互性、死生観の解釈を試みる。
主な個展に、「I can see something strong there / そこに何か強いものが見える」デカメロン(東京、2023)、「INTO THE BLUE」Unlike(名古屋、2020)、「白式」Unlike(名古屋、2013)、「塩玉」PI Gallery(名古屋、2013)、「静刀」Gallery Point(東京、2013)、グループ展に、「“c/o”」THE PLUG(東京、2024)などがある。
渡邊涼太
1998年埼玉県生まれ、東京都在住。2023年東京藝術大学大学院美術研究科卒業。渡邊は、筆で純粋に描く行為と、自身で作成したカッターナイフ等を用いた道具で絵の具を載せて削るという破壊行為を一つの画面で行い、画面にそれらの痕跡を残しながら、作品を制作している。絵画が絵画たりうる根源を追い求めると同時に、時代の鏡面としてのポートレートや風景を描いている。筆跡の生々しさ、濃厚さを漂わせるルシアン・フロイドや要素を削ぎ落とし本質に迫ったアルベルト・ジャコメッティなどの実存主義を踏襲した渡邊の絵画技法は、現代のアプローチへと転換し、キュビズムに通ずる絵画史の更新へ挑戦している。主な展覧会に、「Reflection (Times)」SOM GALLERY(東京、2024)、「Horizon」ロイドワークスギャラリー(東京、2021)、グループ展「「DRAW LINES & SHAPES IN MY MAPS」 T&Y GALLERY(ロサンゼルス、2024)などがある。
EXHIBITED ARTWORKS
EXHIBITION
「Eudaemonia」
Aug 24 — Sep 22, 2024
VENUE
- URL
- http://www.gallerycommon.com/
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前5丁目39−6B1F
- 開館時間
- 12:00 — 19:00
- 休館日
- Mon・Tue
- 入館料
- 無料