話題作の装画でも注目の作家・雪下まゆ個展『FACE』、銀座 MHギャラリーで11/11より開催

Nov 7, 2025 — Exhibition: Solo
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雪下まゆ個展『FACE』フィルムに宿る時間と記憶、自らの“顔”を通して描く創作の集大成

近年、3Dモデルを基にした制作を重ねてきた雪下まゆが、本展では第2弾である作品集『FACE The Artworks of Mayu Yukisita』刊行に合わせ、自身の創作を「集大成」と位置づけた新作シリーズを発表する。
本展の主題となるのは、「フィルムで撮影した自らの顔」。デジタルではなく、あえてアナログなフィルムを選んだ背景には、偶然性と時間の痕跡を持つ“現像の揺らぎ”への関心が原点として存在している。光の滲みや粒子の荒れといった不確かな現象は、作家がこれまで積み重ねてきた時間や記憶を呼び起こすモチーフとして作品に取り込まれている。

雪下はこれまでも、自身の存在を媒介に「顔」を見つめ続けてきた。本展では、その根源である「顔」という最も個人的で、かつ普遍的なモチーフを通して、記憶と現在、実像と虚像の間に立ち現れる“もうひとつの顔”を探る試みが展開される。

雪下まゆの作品は、過去にはグラフィカルな作品も見られたが、近年は次第に写実的なトーンへと移行している。とはいえ完全な写実ではなく、どこかに“イラスト的”な印象を残しているのが特徴だ。
描いた絵と写真を重ねてみると、どの作品もおおよそ同じ比率で、わずかに目の位置が下がり、大きく描かれていることが分かる。彼女の中で自然と生まれるこの“黄金比”こそが、写実性とイラスト的感性が調和する「雪下まゆ」独自のテイストを形づくっている。

デジタル作品の多くは、Adobeの「Fresco」を用い、iPadで描かれている。企業案件として制作されることが多く、彼女の作品を目にしたことのある人の多くは、このデジタル作品を通じて知っているかもしれない。一方で、水彩や油彩など多様な技法にも精通しており、作品ごとに「どの速度感で形にしたいか」を軸に、最もふさわしい表現方法を選び取っている。デジタル作品は主に商業的な制作活動として、油彩作品は作家としての発表時に取り組むことが多い。

彼女の作品には、暗闇の中に佇む人物の、吸い込まれるような黒い瞳や、感情を抑えたなめらかな肌が印象的に描かれている。本展では、人間離れした美しさを讃えながらも、緻密な筆致によって表情に宿る“秘められた引力”を感じさせる雪下まゆ作品の真髄を感じることができる。

雪下まゆ 新作作品集「FACE」 2025年11月28日発売

広告やエディトリアルの領域で活躍を続けるアーティスト雪下まゆにとって、2冊目の作品集。
2021年に刊行した作品集「雪下まゆ作品集」以降に手がけたクライアントワークを中心にオリジナル作品も一挙掲載。
本展覧会にて先行販売中(税込3,300円)

ARTISTS INFORMATION

  • 雪下 まゆ

    Artist
    Japanese, b. 1995

    1995年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。
    写実的でありながらデフォルメやラフなタッチを残した独自の画風で注目を集め、広告・装丁を中心に活動の場を広げている。
    主な仕事に、2022年本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬著/早川書房)、
    東京モード学園TVCM、『MUSIC MAGAZINE』表紙アートワークなどがある。
    2025年には Forbes JAPAN 30 UNDER 30 に選ばれている。

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