沖潤子「よれつれもつれ」

Oct 14, 2022 — Exhibition: Solo
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KOSAKU KANECHIKAでは、2022年10月15日から11月19日まで、沖潤子展「よれつれもつれ」を開催いたします。

沖潤子は、古い布や道具が経てきた時間、またその物語の積み重なりに、刺繍と彼女自身の時間の堆積を刻み込み、紡ぎ上げることで、新たな生と偶然性を孕んだ作品を発表してきました。山口県立萩美術館・浦上記念館で2020年から1年間展示された個展「anthology」では、全国から寄せられた7,000個あまりの糸巻きを用い、新たに紡ぎ生まれたインスタレーション作品を展示。その後KOSAKU KANECHIKAで開催した個展「よびつぎ」では、「anthology」の出展作品に手を入れ直し、展示しました。

そこには新旧の時間が抱擁し合っている、そう沖は言います。存在してきたすべてのもの、過ぎ去ったが確かにあった時間。いくつもの時間の層を重ねることで、違う風景を見つけるということが沖の制作の核にあります。本展に際し、沖は以下のステートメントを寄せています。

生まれてくる子の名前を考えている人がいて、自分の制作に名前をつけてみようと思った。
私の針目はいつも、縺(もつ)れ、ひき攣(つ)れ、縒(よ)れている。
よれつれもつれ。暗号みたいな言葉が降りてきた。
人間の動作で云えば少しも歓迎されない様子をさすが
くりかえし口にしていると作品にこめた時間が昇華するような気がしてくる。
無手勝流の針目を今日からこう呼ぶことにした。

「よれつれもつれ」(縒れ攣れ縺れ)。制作をしていると必ずと言っていいほど糸が縺もつれる。しかしほぐしたりはせずにそのまま縫いとめていると、縺れを受け入れることが制作を進める上で大切だとわかる。糸を強く引いて攣つれた布は織り方や薄さ・艶によって攣れの表情が異なり、年月がきざまれた皺のように見えてくる。そして夥しく刺された針目で縒よれて陰影があらわれた布は、筋肉がつき意志を持ってうごきだす。

このように、通常は好ましく思われないこれらの糸の様子は、沖の制作過程をよく表すものであるだけで
なく、彼女の作品の独創性の源泉となっています。さらに音として口をついて出てきたというこの言葉をきっかけに、あらためて作品の「縒れ攣れ縺れ」に注目すると、作品の上に人体が見えてきたといいます。この言葉との出会いにより、期せずして制作の新たな道が見えたのです。

沖はまた、展覧会で多くの人に作品を見てもらうたびに生まれ直す機会を得たと感じてきたと語っています。「名前をつけて、またそこから始めよう。そして根本に自由があることを確認したい」。すでにあった多様なものたち、過ぎ去った時間を尊重し受け入れ、無数の針を刺すことによって混じり合っていく。そうするには異なるものへ自身を完全に明け渡すことが必要です。それが自由であり、だからこそ沖の作品は生の力に満ち鑑賞者を圧倒するのかもしれません。

EXHIBITED ARTWORKS

EXHIBITION

よつれもつれ

Oct 15 — Nov 19, 2022

Presented by KOSAKU KANECHIKA Past

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