佐藤翠展 「Flower Gazing -見つめる花-」

May 18 — Jun 15, 2024

Presented by SCÈNE Past
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2024年5月18日(土)より、佐藤翠の個展「Flower Gazing -見つめる花-」を開催いたします。

丘の上の白い一軒家の扉を開けると、花がそこここに飾られ、手縫いのカーテンが、柔らかな日差しを受けて揺れている。

テーブルの上では、美しいガラスの器にフルーツが乗せられ、庭では四季折々の花々が風にそよぎ、片隅に置かれた小さなテーブルの上に、午後のお茶の準備がされている。

佐藤翠のアトリエには、彼女の作品の中の景色があります。

作品と生活とが真っ直ぐにつながっているタイプの作家は少なくないけれど、佐藤の場合、作品の中に生きているというようにも見えるくらい、その生活の景色そのものが絵画的に構成されていて、私は彼女の作品を見る時、その展覧会の前後、およそ彼女がどのような心境で、どのような生活を送り、どんな場所を訪ね、どんなものを愛しんでいたのか、そう遠くないところまで、心を寄せることができているような気持ちになります。

アトリエで「ところで、クローゼットはどこですか?」と尋ねると、「あれは、ないんです。夢なんです。私のクローゼットは、小さくて」という言葉が返ってきました。

これは、私にとってとても面白い言葉でした。

佐藤翠といえば、クローゼットの作品を思い浮かべる方も多いでしょう。そのクローゼットに突如花が紛れ込み、ドレスと溶け合い始めたのは、ほんの2、3年前のことだと記憶しています。

佐藤の庭は、彼女自身が丹精した四季折々の花が咲き乱れ、家中に置かれた花瓶にも、この庭から手折られた花が飾られ、作品にも描かれていますが、彼女のクローゼットの作品にはじめて紛れこんだのはこの庭の花々だと、数年前に彼女自身が展覧会に寄せた文章で触れていました。

衣裳持ちの佐藤のことですから、数々の美しいドレスはもちろん、そして彼女の庭の花々も、彼女の身近な世界に実在していて、実在しないクローゼットがその融合地点となり、それらは段々に花であること、ドレスであることを超えて、美しい色と線、マチエルとして絵画の中に立ち現れ、どんどんと抽象化を進めているようです。

一人の作家の作品が、目の前でこんなにも美しく抽象化していく瞬間を、私はまだ他に見たことがありません。

リヒターが写真と絵画を往き来してきたように、ポロックが絵画に発露する無意識に惹きつけられたように、一人の作家がどこかの高みへの道程をたどっているような光景を、目を離し難い気持ちで見つめる日々です。

山本 菜々子

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花を見つめていると、ふと目が合ったような気になる。

魅惑的な香り、美しい色や難解な造形に見惚れて、そのまま頬が触れるくらいに近づいてみる。近づけば近づくほど、だんだん輪郭は薄くなり、意識は質感と色にフォーカスされていく。しっとりとした花びらの感触、黄色に滲む紫色や溶け合う赤とピンク、それだけではないもっと沢山の色に包まれて、花びらは私の中でマチエルと色に変わる。

そしてその様々な色は、風や光を纏って薄く透けるようなドレスとなり、クローゼットの中に現れる。揺れるドレスと風にそよぐ花の姿が重なる。

佐藤 翠

EXHIBITED ARTWORKS

ARTISTS

VENUE

NOTES

OPEN : 12:00 – 6:00p.m.
※By invitation only
※Public Day以外はご招待制・ご予約制です。ご招待状をお届けした方のみご予約いただけます。
Public day:Thursday, Saturday
※No reservation, invitation needed
※木曜日・土曜日は、ご招待状・ご予約は必要ございません。どなたでもご予約なしでご来場いただけます。

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