細井美裕 個展 「 ステイン 」
Nov 7 — Dec 22, 2024
Gallery 38は、東京を拠点に活動するサウンドアーティスト、細井美裕による初個展「STAIN」を開催します。
1993年生まれの細井は、これまで音が空間や時間の知覚を変容させる可能性を探求してきました。本展は、環境音を用いたインスタレーション、映像、キネティック・スカルプチャーなど、約15のサウンドピースから構成され、多様な音の表現を提示すると同時に展示空間には周囲の雑音や街の音が「侵入」し、作品に影響を与えていきます。 細井の作品は、複数の「時間認識という錯覚」を探求しています。本展の各サウンドピースは互いの音の中で共存し、展示全体も街の喧騒から切り離すことはできません。
作品の素材には、壊滅的な状況から日常的な出来事まで幅広いフィールドレコーディングが使われており、福島の原発周辺を歩く音、街での台風の音、友人との会話、子供たちの遊び声、日常の通勤といった多様な音源が含まれています。作家は、制作過程においてこれらの音源と街の音、 外部の音の間の境界を取り除くことを重視しました。雑音は「不要な音」ではなく、重要な情報の一部であり、この雑音の存在が観客を現在に引き戻し、音の混ざり合いを通じて複数の時間が混在する空間を生み出すと言います。この状況を、細井は音が得意とする表現かつ情報処理の一形態であると考えており、「ノイズキャンセリング」が進む社会の中で、私たちが音に対する偏見を自覚する必要があると主張しています。
本展のタイトルにもなっている「STAIN」は、作家本人と「誰か/何か」との対話の記録であり、それらとの関係性の記憶でもあります。この作品内の音が持つ曖昧さと生々しさは、単なる情報としての信号を超えた個人的な物語として、鑑賞者に記憶を呼び覚ますような情緒的な共鳴をもたらします。そして展示空間では、スピーカーとディスプ レイが90度の角度で配置され、未来の観察者の視点を暗示しています。 細井は2022年以降、オブジェクト作品も手がけており、これらのアッサンブラージュは、道具やベルなどで構成さ れ、自身が現代の作家としての役割について感じる緊張感と不安定さを表現しています。音の不在はエネルギーの不在を意味せず、むしろこれらの彫刻に宿った静寂が、より強い共鳴を放つことができると語ります。
「サウンドアーティストとして、私は自分の作品を単なる『オブジェクト』と捉えることはほとんどありません。むしろ、それは思考を凝縮する作業と考えています。したがって、作品が収蔵されても物理的な分離を感じることはあ りません。作品のアーカイブは共同作業のようなもので、パフォーマンスのように、私の手を離れて増殖していくよ うに思えるのです。各作品は、創作のプロセスを深化させる試みなのです。」
VENUE
- URL
- https://www.gallery-38.com/
- 住所
- 2-30-28 Jingumae, Shibuya-ku, Tokyo, 150-0001 Japan
- Tel
- 03-6721-1505
- 開館時間
- 12:00 — 19:00
- 休館日
- Mon・Tue・Holiday
- 入館料
- 無料
- 備考
- *Open during exhibition periods otherwise by appointment only *Find more details on Instagram