この度小山登美夫ギャラリー前橋では、柏原由佳展「Pile of Signs – しるし、徴」を開催いたします。
柏原由佳および作品についてー濃密かつ透明感、虚と実が混在する時空をこえた遥かな世界
青、ピンク、グリーン、茶色など濃密かつ透明感ある色を重ね、大胆なタッチで大地の根源的なエネルギーを鮮やかな感覚で映しだす柏原作品。虚と実が混在する時空をこえた遥かな世界が表われています。
柏原が国内外の原生林を訪れた時の感動や、長く住んだドイツでの経験、様々な風景からのインスピレーションが作家自身の記憶と紡ぎ合わされ、いつどこのものかわからないような森や湖、山、洞窟、地層などが心象風景として描かれてきました。中でも湖は大事なモチーフであり、茨木のり子の詩「人間は誰でも心の底にしいんと静かな湖をもつべきなのだ」という一節に感化され、自身の中にも湖をもち、理想の湖を持ち続けたいと語ります。
作品に広がる、人間も動物もいない一見静寂な世界。しかしその大地の奥にはマグマがひそみ、まるで宇宙までつながっているような、異次元を垣間見たような不思議なざわめきを感じさせます。それは画面に自身の視点と他者から見えるかもしれない視点、内と外から俯瞰したような多視点で描かれていること。また試行錯誤を繰り返し、翌日には絵が一変するなど、イメージの上に新しいイメージが加わることで、画面の変化と時の重なりが、独特の力強さと静かな混沌さを生み出しているといえるでしょう。
美術評論家、東京大学名誉教授の高階秀爾氏は、柏原作品に関して
「これらの作品を前にする時、われわれは一人の優れた画家の世界創造の物語に立ち会っているのである」と評しています。
(高階秀爾「柏原由佳の世界創造物語」、「最初の島再後の山」個展カタログ、大原美術館、2016年)
本展覧会および出展作に関してー沼田の河岸段丘の時間の蓄積の輝き、無意識を可視化する新たな挑戦
柏原は本展にあたり、次のように述べています。
「小さい頃、形ある古いものに憧れていて、叔父の機械式の一眼レフやアルコールランプ、
おじいちゃんの革靴とかをずっと眺めているような子供だった。
誕生日にはいつも恐竜図鑑や妖怪図鑑を買って貰い、いたかもしれないその時代や景色を想像しながら、絵を描いた。
ドイツに渡り、蚤の市では何百年も昔の人が書いたポストカードを集めては、
その人の文字や切手、書かれた時代を想いながら、家で眺めるのが好きだった。
いたかもしれないその時間の形跡、蓄積や層、曖昧なもの、不確かなもの、
そういうものに何度も思いを馳せながら絵を描くことは、その時間の中に光を見つけるようなこと。」
新作を制作するにあたり、柏原は本開催地の群馬に赴き、沼田の河岸段丘を訪れました。その独特な地層がまるで時間の蓄積を可視化し、1月の雪が残る青空の中で浮かぶように輝いていたといいます。その目で見た風景と脳裏に浮かんだイメージを作品「River Terrace」に混在させ表しました。
「Urzeit」 (原始の時)は、ブルネオ島のコタキナバルで4200mのキナバル山に登った体験をもとにされています。鬱蒼としたジャングルの中の光や瑞々しさを見事にとらえ、実際の風景をもとにしつつも、より抽象化された、作品の新しい方向性を示しています。
私たちは柏原作品を通して、普段生活していて忘れがちな、自分は大いなる自然宇宙に包まれている存在だという悠遠な感覚を呼び起こされるでしょう。この貴重な機会にぜひお越しください。
EXHIBITED ARTWORKS
EXHIBITION
ARTISTS
VENUE
- URL
- http://tomiokoyamagallery.com/
- 住所
- 群馬県前橋市千代田町5丁目9-1(まえばしガレリア内 Gallery 2)
- 開館時間
- 11:00 — 19:00
- 休館日
- Mon・Tue・Holiday
- 入館料
- 無料
NOTES
プレスに関するお問い合わせ先:
Tel: 03-6459-4030 (小山登美夫ギャラリー オフィス)
Email: press@tomiokoyamagallery.com
(プレス担当:岡戸麻希子)