この度、2024年8月24日(土)から9月22日(日)までの期間でPoP(Point of Parallel)にて、企画展「連帯感」を開催します。
PoPの2回目となる本展では、 Marco Galleryディレクター菰田寿允、 TEZUKAYAMA GALLERYディレクター岡田慎平に加え、 keshik.jp ディレクター黒田純平の3名による共同ディレクションによって企画します。
ディレクター3名がディスカッションを重ねる中で立ち上がったテーマである「連帯」の在り方をディレクター3名で議論し、3 名のアーティストと連携し構成します。本展では、「連帯」という輪郭や、意識する入り口となる、序章的な内容となります。
是非、ご高覧賜りますようお願い申し上げます。
PoP (Point of Parallel) 概要
PoP (Point of Parallel)は、 2024年 7月に大阪から同時代のARTを発信する場としてオープンいたしました。
Point of Parallelとは、直訳するとʻ平行の点 ʼを意味し、従来平行線のような関係であるものが一つの点 (PoPという場所)をきっか けにして交わることで 、何かが現象的に立ち現れる 、ʻ PoP ʼするかもしれない実験所として機能することを期待しています。
具体的には、異なる文化、表現、および視点が交差し、共鳴し合う場の創造をします。ARTを通じて異なる背景や経験を持つ人々を 繋ぐことで、横断的な対話の機会を生み出すことをミッションとします。
また、展覧会という形式を介して、どのような化学反応が生まれるのかを観測すると同時に、豊かな価値基準と人材と人材の創出を 目指します。
大竹舞人 | Maito Otake
1992年東京都生まれ。
アーティスト。幾何形態を組み合わせた独自の構成物を描いている。展示を中心に、装幀画などのイ ラストレーションも手がけており、最近は立体物にも取り組んでいる。
幾何形態を組み合わせた独自の造形物を描いている。
物体と物体の関係性に興味があり現実的な物理法則を元に
力関係やバランス、重力を考えながら理想の関係性を平面で表現している。
絵の中で立体物が揺れ動くような緊張感のある関係性を描いている。
平面にする事で現実では成立するかしないかのギリギリの間を行き来する。
次の瞬間、一瞬で崩れるのか、そのような構成物が絵の中では永遠に成立する。 色彩のベタ面と黒い主線の画面が構成物をよりフラットに見せる。
考えている用途のない立体物はどのような存在になるのか考えていきたい。
カワイハルナ | Haruna Kawai
2019 年 京都精華大学版画コース 卒業
2022 年 武蔵野美術大学院版画コース 修了
1996 年生まれ。現在は主に油絵や版画、立体作品など様々なメディアを用いて制作を行っている。集 団や個人の存在とその変化について探求し自己認識を深めている。図形を用いた表現や、社会や感情 といったものにも形を与えて再解釈を行う。
酒井建治 | Kenji Sakai
東京都生まれ。東京藝術大学彫刻領域博士後期課程、修了。
ある構造をもった対象の生成を通じて「行為」を物質化させる。制作は事前に定められたルールに 基づき行われ、その指示に従って行為を反復することで、自身の身体を道具のように扱う。
菰田寿允 | Toshimitsu Komoda
大阪府出身。同志社大学大学院法学研究科修士課程修了。クロスオーバーというコンセプ トの下、作家と共にMarco Galleryをはじめ、展覧会の企画や国内外のアートフェアへの 参加などを行なっている。まるで生きている時代や社会に呼応するようにしてアーティス
トたちが表現するものが文化や 国、時間を超えて、どこかの誰かによって読み解かれ、 その人にとってアーティストが生み出した作品群が、アーティストの生きた時代や社会を 紐解くための知覚的な参考書となることを期待している。
岡田慎平 | Shinpei Okada
大阪府出身。2014年から現在までTEZUKAYAMA GALLERYに勤務。ギャラリーでの展覧会 企画、プレス対応、出版物の編集業務のほか、国内外のアートフェアにて所属アーティスト の紹介を行う。個人でも展覧会、アートフェアの企画運営を複数手掛ける。2020年から共 同代表として大阪にてアートフェア「DELTA」を立ち上げ、現在まで活動。同年より、 ART OSAKAの運営にも関わる。大阪を中心とした美術業界の活性化に従事している。
黒田純平 | Junpei Kuroda
大阪府出身。京都精華大学芸術部学部卒業。2016年に「場所をもたないギャラリー」 keshik.jpを主宰し、ノマドスタイルで展覧会企画を行いながら、株式会社マガザンに所属 し2023年に松竹株式会社が運営するアートスペース「SHUTL」のディレクターも担当。現 代美術の他に、様々なジャンルで「展覧会」というパッケージで企画を行う。
ステートメント | Statement
ー菰田寿允
連帯感について考える。きっとʻ連帯感ʼという言葉の前には、多くの修飾語が必要なのではないかと思う。一言に連帯感とは、こういうものだ、と 一義的に捉えることは容易ではない。経済的連帯感、精神的連帯感、さらに、その中でもさらなる分類がありうる。
私にとって、今回、類似の立場にある岡田慎平と黒田純平と交わした対話は、言葉にはしてこなかったが心のどこかに潜んでいたʻ連帯感ʼに対す る自分の感度のようなものを探し、見つめ、検討するきっかけになっている。本展を含め、私は、今後この命題についてより深まりが出てくること を期待している。
さて、そんな思いを抱きながらのʻ初回ʼであるが、私は、彫刻家である大竹舞人を推薦した。ʻ連帯感ʼと聞いてすぐに浮かんだのが彼だった。彼の 作品は、平面上の柔らかい布同士を両手に持ってその手を機織りのように運動させ、力を込めて編んでいくということだけで成立している。ʻ柔らか い布x手編みʼだけで、中が空洞で支柱もないにもかかわらず、表面が硬く、自立する立体的な造形物が瞬く間に現れる。つまり、布(柔)と手編み による圧力(剛)の掛け合わせによって生み出された硬い構造物では、いわば絶妙なバランスの化学反応=ʻ連帯ʼが起きているのである。
この化学反応が面白いのは、その構造物内から1枚の布が、1本の筋がなくなった瞬間、その硬さは脆く崩れ、自立することができないということ である。確かに、彼の作品の中では、布同士の絶妙な連帯した関係性が見て取れたのである。
さて、そんな作品を語る上で作者である彼について、作家としてではなく、より個人的な側面から迫りたいと思う。なぜなら、今回の連帯感に ついて彼自身と彼の作品を通して眺めることで、感覚的に訴えかけてくる何か大切な示唆を見せてくれると考えているからである。
彼とは、かれこれ4~5年の付き合いになる。彼は普段ルームシェアをしながら、生活をしている。私はそこの住人を含め、その生活を垣間見るこ とがあった。一つ屋根の下で大人6人が、日々を共にすることは青春群像的テレビドラマでない限り、なかなかに難しいと私は思う。それを目の前で 繰り広げている彼らの人間的(=他者を想像し、ときに踏み込み、ときに見守るような均衡ある共助的な)向き合い方、それがゆえに滲み出てく る彼らが一堂に会した時の空気感を見るにつけ、私は自分の胸がじんわりと熱くなる時がある。それは、どこかでいつか感じたことのあるもののよ うで、もうなかなかに会えなさそうな高揚感に近いのではないだろうか。このときに私は一つの連帯感の姿を見た気がした。
彼の作品は彼から生み出されているものであり、その彼は、彼の周りを囲む人間関係にはじまる関係性の中で立ち上がっている存在である。そんな二つは今回のʻ連帯感ʼを検討するための1歩目としての良いメタファーとして機能してくれるのではないかと考えている。
―岡田慎平
本展は、私を含めた共同企画者3名がディスカッションを重ねる中で浮かび上がった「連帯感」というテーマのもと構成される。
「連帯」
改めてこの言葉を前にした時、私はそれが指す意味の強さや強制力にも似た印象を受け、ある種の躊躇いに近い感覚を覚えた事をはじめに告白し ておきたい。意識的であれ、無意識的であれ、それは社会の至るところに存在しているし、私個人のこれまでの経験や活動を振り返っても、その 感覚自体には確かな覚えがある。しかし、一つの展覧会を介して、「連帯」に対する明確な回答を私個人の中で導き出すことは現時点においては避 けたいという思いがある。今後、このテーマと繰り返し対峙することを通して、カタチや認識が変化しながら少しずつ輪郭が生まれてくるであろ うと期待している。
そんな事を考えながら、あるアーティストの作品がふと脳裏に浮かんだ。今回、私が推薦するカワイハルナはシンプルな幾何形態を組み合わせた 構造体を描くアーティストだ。カワイが描く構造体は独特な色彩で着色された球体や円柱、直方体などから構成されている。幼い頃からモノとモ ノとの配置や構成、そこから生まれる関係性に関心を持つようになったと言うカワイの作品は、現実的な物理法則に基づいた力関係やバランス、 重力を意識しながら'理想の関係性'を平面で表現している。個々の造形的な特徴や個性は保たれながら、それらが絶妙な距離間、緊張関係のうえで 支え合い、全体として一つのカタチを成している。そして、そのカタチは絵の中でのみ永遠に成立し続ける状態を獲得している。
現実には少しのバランスの変化や外的要因によって一瞬で崩れるかもしれない状況を容易に想像が出来るからこそ、作品の中で生まれている造形の妙や拮抗した力関係がより際立って目に映った。そこに私は「連帯」らしき、一端を垣間見たのかもしれない。
―黒田純平
現代の社会では、秩序を持ち、改革が進むようになっている。これにより、秩序をもって逸脱を取り締まるいわゆる「コンプライアンス」を意識す る時代となった。かつては、コンプライアンスの意識がそれほど強くなかった「雑然」とした時代も存在した。その時代には、個々の「思想」が共 鳴し、連なる共同体が形成されていた。それはまさに「連帯」と同義ではないだろうか。
その連帯という集合体にはどんな思想が含まれているのだろうか。だから私は、本展に参加する上で「連帯」についてより深く、これから長い付き 合いになっていくことを覚悟し、取り組むことにした。
本展では、「連帯感」に対して適切な作家を選びたいと考え、アーティストの酒井建治を選出した。
酒井は、東京を拠点に活動しながら、半蔵門のスペース「MATTER」を運営していた。アーティストでもありながらギャラリスト、キュレーターな どディレクターサイドの側面をもつ酒井は、そこでの活動を通して、同世代のアーティストたちと協同しながら向ける視線は同じになり連帯してい く経験を持っている。現在スペースは終了したが、それでも連帯の結束は解けないまま各地でグループとして活動を行いながら個人の作家活動と平行している。
制作にも連帯性をテーマに取り込んだ絵画作品を近作として発表しており、人や社会を三角形に見立て、その集合体を描いてるシリーズ「White Cliff」がある。本作は連帯の強さを表すとともに、崩れてしまいかねない繊細さも表現されている。
酒井の思想は、「どんなこともある程度積み上げたら、崩して平らにする必要性を感じている」と言う。これは、彼が作家としての孤独の一面と、 「MATTER」を主宰し運営してきた経験から生まれた思想だろう。
そんな酒井の連帯に対する思想が現れる「White Cliff」シリーズは、三角形の形は変容していきながら、連帯の形が変わっていくだろう。そんな一つの通過点となる作品群を鑑賞しながら、連帯に対する考え方を再認識する機会として、我々の世代、これからの世代が続く道標となることを期待する。
展覧会情報 | Exhibition Information
連帯感
[会期]
8/24 sat - 9/22 Sun
Open | Wed-Sun 13:00-18:00 Closed | Monday, Tuesday
[Artists]
大竹舞人| Maito Otake
カワイハルナ | Haruna Kawai
酒井建治 | Kenji Sakai
[Access]
PoP (Point of Parallel)
〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場4-12-25 竹本ビル4F
*1階にMarco Galleryが入っているビルの4階
[Contact]
TEL: 06-4708-7915
MAIL: info@pointofparallel.com
EXHIBITION
企画展「連帯感」
Aug 24 — Sep 22, 2024
VENUE
- 住所
- 〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場4-12-25 竹本ビル4F
- Tel
- 06-4708-7915
- 開館時間
- 13:00 — 18:00
- 休館日
- Mon・Tue
- 入館料
- 無料