タムラサトル個展「ワニがまわる理由(ワケ)は聞かないでほしい」

Aug 26, 2022 — Exhibition: Solo
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このたび MAKI Gallery と TEZUKAYAMA GALLERY では、栃木県を拠点に活動するタムラサトルの個展「ワニがまわる理由(ワケ)は、聞かないでほしい」を共同開催いたします。

 本展は、今年6月に国立新美術館(東京・六 本木)で好評を博した個展に続き、タムラが 30 年近くにわたり制作を続けてきた代表作、「まわるワニ」シリーズに焦点を当てます。東京・表参道と大阪・南堀江の 2 会場で合計 1,000 匹以上のワニが回転し、彩りと動きの爆発が、観る者を非現実的なダイナミズムで包み込みます。

 まわるワニが初めて構想されたのは、タムラがまだ筑波大学の学生だった 1994年秋でした。当時機械仕掛 けの作品が全くの未経験だった彼は、ʻ 電気を使った芸術装置 ʼ という教授からの課題に頭を悩ませていました。「明日の朝、最初に思い付いたものを作ろう」。そう決心したタムラが翌朝ふと思い浮かべたのが「まわるワニ」だったのです。彼は有言実行とばかりに、4.5 メートルの緑色のワニを手作りし、回転する台座に設置しました。そのばかばかしい光景に魅了され、タムラは卒業後も同じように不条理なコンセプトを追求するようになります。以降、電気と機械仕掛けはタムラの芸術実践において不可欠な存在となり、まわるワニは作家のキャリアとともに進化し続けました。

 2022 年、タムラは 1,000 匹のまわるワニを作って国立新美術館の巨大な展示スペースを埋め尽くすという 異例な大仕事に挑みました。作業を効率化する工夫を重ねながら、自身の手で粘土を扱い、タムラはワニを一つ一つ丁寧に形成していきました。また、それぞれユニークな名前を付け、回転速度にも微妙な変化を付けることにより、ワニたちの個性をより際立たせたのです。そのためか、ワニたちは電動の機械装置にも関わらず、独特な温かみと人格を持っているように感じられます。

 ワニは、日本では野性に生息せず飼育下の個体しか存在しないため、一般的には危険でエキゾチックな動物 という印象を持たれています。その異質さをさらに誇張すべく、タムラはワニたちを青やオレンジ、白など様々に彩り、20 センチから 12 メートルまでの幅広いスケール感で制作しています。同時に、恐ろしい生き物が無害でキッチュなキャラクターに変身するという、純粋に面白い現象を作り上げています。不思議なことに、タムラのワニは現実から離れれば離れるほど、愛らしく親しみやすい存在になっていくのです。

 タムラのキネティックな彫刻は電気や工業素材を利用しながらも、全く非生産的であることが特徴です。彼の芸術実践に通底するアイロニックな無用さには、生産性や効率に固執する現代社会へのさりげない皮肉が含まれています。実際、タムラの作品は明確な芸術的目的すら提示しておらず、芸術の役割や意味に対する鑑賞者の固定観念を覆します。本展のタイトル通り、タムラは作品の意図をはっきりと定義することを拒んでおり、 鑑賞者には直感的に作品に触れ、自身の素直なリアクションに意識を向けることを促しています。是非この機会に、自然と機械がぶつかり合い、ナンセンスでありながら魅力的である、タムラの不思議な世界をご高覧ください。

EXHIBITED ARTWORKS

EXHIBITION

タムラサトル個展「ワニがまわる理由(ワケ)は聞かないでほしい」

Aug 27 — Sep 24, 2022

Presented by MAKI Gallery 開催終了

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