髙橋銑「条痕板/Streak Plate」

Apr 25 — May 31, 2025

Presented by Otherwise Gallery 開催中
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Otherwise Galleryより、彫刻家・髙橋銑による個展「条痕板/Streak Plate」の開催をご案内申し上げます。

髙橋は、彫刻作品の保存修復に携わるなかで培った素材への洞察をもとに、素材の劣化や痕跡に内包された時間性や記憶を、現代彫刻の実践を通して可視化する作品を発表してきました。

本展では、大理石を支持体とした新作シリーズを初公開いたします。金属の酸化による錆の色や染みが石の表面に沈着する現象に着目し、それを意図的に定着させるという試みによって、彫刻というメディウムに新たな視座を提示します。

展覧会タイトル「条痕板」は、保存修復の現場で見られる筋状の痕跡=「条痕」から髙橋が着想した造語でしたが、調べを進めるうちに、鉱物を識別するために用いられる素焼きのプレート「条痕板」を指す実在の言葉であることを知ります。偶然にも「観察に基づき痕跡から本質に迫る」という行為の一致に、髙橋は強い共感と手応えを感じ、本タイトルの採用に至りました。

恣意と自然が交差する「痕跡」をめぐる彫刻的思考の展開に、ぜひご注目ください。

<Artist Statement>

通常、“錆”は金属ごとに異なる発色を示す。
一般にイメージしやすい例をあげるなら、鉄が錆びると赤茶色に変わっていくのが想像しやすいだろう。本展の着想はアーティストとして活動しながら屋外彫刻の保存修復にも従事してきた私が、全国各地で金属作品の酸化した表面が雨によって流れ出し、酸化色が台座の石に染み付いてしまっている様を度々目にした体験から得ている。作品の足元に着いたその染みや、条痕と呼ばれる酸化色を含んだ液体の垂れ跡は大抵少し汚らしく見えるが、発色自体に注目すると毎回素直に綺麗だと私は感じている。そして時折、作品そのものを見る時よりも想像力が掻き立てられることさえある。なぜならそれは作品周囲の大気状況を克明に記録した痕跡であり、関わった人々の手入れの有無の結果であり、その作品が物質的に消失に向かっているという現実であり、そしてその作品がそこに存在した時間の証明でもあるからだ。
本展は石の支持体と銅・真鍮・鉄などの腐食性の金属から構成される。
石に刻まれた溝は、金属片から出た錆を含んだ水が作り出す染みによって色づけられている。ここで起きていることは私がみてきた屋外彫刻ととても似ている。今回のように恣意をもって付けられた染みと自然に作られた染みは全く別物だが、それらを見る時共に同じ想像力を働かせることは出来る。
私は自分が作品をつくり発表する事を通し、観賞者にとって、私の表現とは直接関係のない世の中のさまざまな事象の見え方に発見があればよいと考え制作している。そして、ものが残ること、消えることの話題はあらゆる事象に通底して存在するため、私は繰り返しこのテーマに取り組んでいる。

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