Ichi Tashiro「verve」

Nov 23 — Dec 22, 2024

Presented by Gallery Common 開催終了
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Gallery Commonでは2024年11月23日から12月22日まで、Ichi Tashiroの個展「verve」を開催いたします。Tashiroはこの2年間、抽象絵画への彫刻的なアプローチを新たに探求し、洗練させてきました。本展では、はじめてその成果を大々的に発表いたします。新しく作られたシリーズでは、これまでの作品で主に使われてきた紙のコラージュ技法に、カービング、スカルプティング、筆跡をつける技法を組み合わせています。彫ったり貼ったりする過程を傷跡や治癒と同一視することで、Tashiroの作品は身体のように、トラウマと変容の循環を表す器となり、複雑に絡み合う人間の経験の美しさをとらえます。

近年、Tashiroの作品はシュルレアリスムに由来するようなイメージから、壮大に広がる内的感情の風景へと向かっています。Tashiroの作品からわかるように、それぞれのペインティングには私的な意味が込められ、作家が日々抱く感情を収める精神的な器としても機能しています。もっとも大きい変化は、平面から逸脱したことです。彫刻や彫金の道具を使って絵画パネルに向き合い、揺るがない肉体の力強い存在感を放つ作品を制作しています。

今回の作品は、木彫りのレリーフから始まり、その上に紙を何層にも貼り付け、油性インクを染み込ませています。これまでの作品と同様、Tashiroは紙にこだわり、作品の核に位置付けています。紙という素材は、表面に様々な質感を与えるだけでなく、立体的な造形が可能になります。Tashiroは、何層にも重なった紙を使い、木のくぼみとバランスを取るようにして隆起や突起をつけています。

油性のインクを用いたり、大胆なストロークを感じさせる身体的な顔料の表現を初めて取り入れたりすることでTashiroのアプローチはさらに進化しました。ダイナミックな動きと入念なディテールを交互に施すことで、作品の表面を純粋な感情によるエネルギッシュな表現に変貌させ、細部まで作り込んだプロセスに予測不可能性と偶然性を取り込んでいます。

力強いカービング、荒っぽいストローク、ぶつかり合う色、そして対照的な質感を組み合わせ、筆跡をつけるための型破りな方法によってTashiroは、ペインティングにおける慣習を壊しています。エッチングされた表面は、キャンバスの平面的な広がりとは異なり、各作品に込められた作家の身体性を鑑賞者が感じ取れるような触覚的な体験をもたらします。さらに重要なのは、平面を地形学的なものに変えることで、Tashiroの作品がもはや鏡や扉としての役割を果たすのではなく、むしろ、もろく不完全な人体の柔和な肉体を想起させることです。質感が添加され、何層にも重なった表面は、傷だらけでありながら、目に見えない絶え間ない生命力に支えられている私たち自身の皮膚に似ています。彫り、重ね、彩色する過程は、作家にとって、傷ついた後に待っている再生のプロセスのようです。こうして、作品はカタルシスの場となります。生々しい感情を支える作品は、人間の回復力に対するTashiroの畏敬の念を表しており、生き延びるための普遍的な物語を体現しています。そして、それは変容していくことを美しいとする共通の考えを促すのです。

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