BIO
野口は武具や甲冑、それらを纏った人間をモチーフに、リアリズムの視点から制作活動を続ける作家である。
幼い頃から古典油彩画に興味を持ち、同時に武具や甲冑にも惹かれてきた野口は、制作の中で両者を統合し、所謂ハイパー・リアリズム彫刻に近い形でそれを実践している。
一般的に我々が思い描く武士の姿というのは、美意識や精神論に偏ったステレオ・タイプのイメージがある。しかし野口の作品の中の人物は、現代人との間に大きな区別を設けておらず、そこには「リアルな甲冑を作る事以前に、リアルな人間の姿を探求したい」という野口の想いが現れている。
「無さそうであるもの」と「ありそうで無いもの」の両者が交錯する世界観の中で、それでも見る者に安心感を与えるのは、鑑賞者がそこに生きた人の気配を感じるからだろう。ユーモラスなだけではなく、全ての作品にそこはかとなく漂うペーソス(寂寥感)が読み取れるのも、作家本人の人間観に基づくものと思われる。
野口の作品のもう一つの魅力は、その技巧に見ることが出来る。豊富な知識と卓越した技術によって、 甲冑武具の細部や、絵画画面の劣化に至るまで丹念に作り上げられるが、これは先に述べた油彩画の技巧が大きく関係している。学生時代に一貫して油彩画を専攻し、古典絵画からリアリズムの技法を学んだ野口にとって、古色や劣化を色彩へと分解し、キャンバスに再構築する作業はごく当たり前の事であるからだ。
過去から現代、そして未来へと時代の姿が変わっても、その中に順応してゆく人間の姿は決して変わらない。野口の作品世界が紡ぎ出すリアリティーはそんなごく当たり前な事実を私たちに垣間見せてくれる。
個展
2008 「野口哲哉展」/TCAF2008
2011 「ポジティブ・コンタクト」/松坂屋名古屋店
2011 「野口哲哉展」/ギャラリー玉英
2014 「野口哲哉展―野口哲哉の武者分類図鑑―」/練馬区立美術館(東京)/アサヒビール大山崎山荘美術館(京都)
2015 「The HISTORICAL ODYSSEY」/羽田空港国際線ターミナル
2015 「SLEEP AWAY」/アートフェア東京2015
2015 「野口哲哉ノ作品展 別世界旅行」/ギャラリー玉英
2016 「Human silhouette」/アートフェア東京2016
2016 「Antique Human」/ギャラリー玉英
2017 「ドローイング展 〜鎧と鉛筆〜」/ギャラリー玉英
2017 「作品展 armored neighbor 〜鎧を着た隣人〜」/ギャラリー玉英
2018 「中世より愛をこめて」/ポーラミュージアムアネック
2019 「鎧ノ中デ - 富山編 -」/森記念秋水美術館(富山)
2019 「This is not a Samurai」/Arsham Fieg Gallery ニューヨーク
2021 「This is not a Samurai」/高松市美術館/群馬県立館林美術館/刈谷市美術館/山口県立美術館(予定)
グループ展
2007 「ゴミがアートになる!超高品質なホコリ展」/旧中工場アートプロジェクト(広島)
2007 「現代アーティストによるLE MONDE DE COCO―ココの世界」/シャネルネクサスホール
2008 「アートフェア東京」(〜2018年まで毎年出品)
2008 「The House展―現代アートの住み心地」/日本ホームズ住宅展示場(東京)
2008 「NETWORK JAPAN PROJECT」/INTERALIA(ソウル、韓国)
2009 「Parabiosis」/Soka Art Center(台北、台湾)
2009 「医学と芸術:生命(いのち)と愛の未来を探る」/森美術館(東京)
2010 「BASARA」展/スパイラルガーデン(東京)
2010 「YOUNG JAPANESE POSITIONS」/Michael Schultz Gallery Seoul(ソウル、韓国)
2010 「甲冑の昔と今」/ギャラリー真玄堂
2012 「Fantasy and Absurd Reality of JAPANESE CONTEMPORARY」/Edwin’s Gallery(ジャカルタ、インドネシア)
2013 「有馬温泉路地裏アートプロジェクト」/(兵庫)
2015 「茶の湯 釜の美」/泉屋博古館分館
2016 「再発見!ニッポンの立体」/群馬県立館林美術館/静岡県立美術館/三重県立美術館
2017 「CROSS POINT 交差する視線ー20の表現」/香川県立ミュージアム
2018 「集え!英雄豪傑たち 浮世絵、近代日本画にみるヒーローたち」/横須賀美術館
2020 「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」/サントリー美術館
その他の活動
2011 「稼働する事」/芝浦工業大学 メインビジュアル
2014 「Happy children’s day」/Audi Forum Tokyo
2017 「長野大学」/長野新聞 広告
映像
2017 「Tetsuya Noguchi, Artist」/toco toco YouTubeはこちら
2017 「DESIGN TALKS plus: Samurai Icons」/NHK WORLD
インタビュー
2017 「なぜ侍がヘッドフォンを付けるのか。現代美術家・野口哲哉のリアリズムに迫る」「なぜ侍の標本を作るのか。現代美術家・野口哲哉の自然観に迫る」/nebula
出版物
2014 「侍達ノ居ル処」/青幻舎
2017~ 隔月刊誌「猫びより」/辰巳出版 見開きコラム「昔の猫、昔の人」連載中
2018 「野口哲哉作品集 〜中世より愛をこめて〜 From Medieval with Love」/求龍堂